曲の原典をたどる
「山の音楽家」で、耳の育ちを確かめる。音数の多い旋律に挑戦
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次は「山の音楽家」はどうだろう。これまでより音数が多めで、耳が育っているか確かめるのにちょうどよいかもしれない。今回は、そんな気持ちで選んだ曲です。聴き覚えを頼りにしながら、音の一つひとつまで追えるか試してみます。
音数が増えても、ひとまとまりで歌えるか
短い旋律なら追えても、音が続くと途中から曖昧になることがあります。そこで今回は、聴いている最中について歌うだけでなく、一度止めてから歌ってみます。次の音を自分で思い出せるか、どこで迷ったかを確かめる練習です。
練習には、聴き慣れた「山の音楽家」の構成を使います。底本は1948年の教科書『小学音楽 四年生』の掲載譜。冒頭の旋律を2回歌い、そのまま細かな音が続く後半へ進みます。前回の「我は海の子」は、タイをつないで49回の発音でした。今回は同じ音の連続や短い音の並びまで、一つずつ聴き取れるか試します。
音数だけで難しさが決まるわけではありません。今回の音域は1オクターブで、「我は海の子」より狭くなっています。長さ、速さ、音の跳び方を分けて、自分が迷いやすいところを見つけてみましょう。
「山の音楽家」で練習する練習に使うのは、日本の初期掲載譜
1948年発行の『小学音楽 四年生』には、「山の音楽家」が水田詩仙・ドイツ民謡として掲載されています。わらべ館の所蔵記録で書誌と収録を確認し、村尾忠廣・ヘルマン・ゴチェフスキ・奥忍の研究論文に掲載された原譜(38頁、譜例6)を見て、上声の旋律を採譜しました。
冒頭の同じ旋律を2回歌い、高いレ・ド・シ・シ・シ・ド・シ・ラ・ラ・ラを2回続けて、最後の句で締めくくる構成です。後半の下声と日本語詞は練習に含めず、旋律だけを表示・再生します。
わらべ館:1948年『小学音楽 四年生』の所蔵記録古いドイツの掲載譜とは、どこが違う?
今回の調査で確認した最も古い掲載譜は、Ludwig ErkとWilhelm Irmer編『Die deutschen Volkslieder mit ihren Singweisen』第1集(Berlin: Plahn、1838年)です。バイエルン州立図書館が公開する冊子64頁、ビューア画像66/76に、第59曲「Das Lied vom Musikanten」があります。日本語版の直接の底本と確定した資料ではなく、元歌の系統にある古い掲載譜として紹介します。
その第1節には、冒頭と細かな音型の間に「高いレ・シ・ソ・ラ・ソ」が4回出てくる中間部があります。後半も、細かな音型から最後のソまでをひとまとまりにして2回歌います。日本で聴き慣れた版とは、中間部の有無と繰り返す範囲が違うのです。
研究論文も、日本語版では中間部がなく、細かな音型を2回続けてから締めくくる違いを論じています。古い譜と違うからといって、覚え間違いとは限りません。今回は知っている旋律で耳を確かめるため、日本の掲載譜を練習に採用しました。
1838年の掲載譜を見る三つに分けると、確かめることが見えてくる
第1フレーズ:出だしの旋律。 低いレ→ソの跳躍から始まる14音です。まず聴いてから止め、次の音を思い出しながら歌います。
第2フレーズ:同じ旋律をもう一度。 第1と同じ14音です。一度目の記憶を頼りに、高さと長さが同じようにつながるか確かめます。
第3フレーズ:細かな音と、終わり方。 高いレ・ドから始まる10音の並びを2回続け、最後の句へ進みます。短い二音に気を取られず、シやラを同じ高さで3回ずつ歌えるか聴いてみます。
音名は練習画面と同じ西塚式の固定ドで、掲載譜のト長調の場合です。今回は旋律中に半音の音名は出てきません。調を変えると表示する音名も変わります。
冒頭のレ→ソは完全4度、半音五つ分の上行です。最後の句では高いレからシへ短3度、続くシからソへ長3度と降ります。高さを飛び越すところで迷ったら、停止中に楽譜の二音を順に押し、まずその二音だけを歌います。
短い音を急がず、長さの違いを聴く
冒頭には、付点八分音符と十六分音符の「長・短」があります。四分音符を1拍とすると0.75拍と0.25拍です。一方、後半の入りのレ・ドは、0.25拍ずつの均等な二音。見た目の細かさが似ていても、長さの組み合わせは違います。
最初はテンポ80、追いにくければ68や56に下げます。速く通すことより、どちらの音が長いか、同じ音が何度続くかを確かめます。休符の間も拍を数え、次の短い入りにつなげてみてください。
1948年の掲載譜の速度表示は四分音符=92です。練習画面では少しゆっくりした80から始め、選んだ一定テンポで再生します。
耳の育ちを確かめる、今日の練習
- 条件を決める。 無理なく歌える調と声域を選び、テンポ80で始めます。掲載譜のト長調なら男声はレ3〜レ4、女声はレ4〜レ5です。
- 一つを聴き、止めてから歌う。 第1フレーズを聴いたあと、楽譜から目を離し、「ラ」などで歌います。全部思い出せなければ、出だしだけでも構いません。
- 迷ったところを確かめる。 楽譜を見て、曖昧だった音を押します。「上下は分かったが、跳ぶ幅で迷った」など、気づいたことを一つメモします。
- 同じ条件でもう一度。 調とテンポをそのままにして聴き直し、再び歌います。余裕があれば第2、第3フレーズへ進みます。
振り返る目安は、「聴き直した回数」「途中で迷った場所」「楽譜を見る前に違いに気づけたか」の三つです。次の日にも同じ調とテンポで試せば、その日の自分と比べやすくなります。回数や気づきは手元にメモしてください。
この練習は録音や採点を行いません。また、曲を覚えた効果もあるので、歌えたことだけで音感全体の向上を判定するものではありません。それでも、「ここが曖昧だった」と自分で見つけ、確かめられたことは、次の練習を決める手がかりになります。
短い旋律で試したい日は「月」、同じ音型と休符を聴く練習なら「虫のこえ」も使えます。一度に全曲を覚えようとせず、今日は一つのまとまりから始めてみましょう。
三つのフレーズで練習する資料と、練習用に整えた範囲
- わらべ館:『小学音楽 四年生』。1948年8月25日発行、佐々木英・黒澤隆朝著、教科書番号401。「山の音楽家」の収録を確認しました。
- バイエルン州立図書館:1838年『Die deutschen Volkslieder mit ihren Singweisen』第1集。冊子64頁、第59曲の第1節。所蔵記号 Mus.pr. 113 a-1,1。2026年9月16日確認。
- 村尾忠廣・ゴチェフスキ,ヘルマン・奥忍「《山の音楽家》─その原曲の伝播と変容─」。『音楽教育学』51巻1号、2021年、36–46頁。38頁の譜例6にある1948年の原譜を練習の底本とし、元歌と日本語版の構成の比較にも参照しました。
1948年掲載譜の上声を独自に採譜・浄書しました。冒頭の反復は書き下し、音符と再生が一対一に対応するようにしています。下声、歌詞、息継ぎ記号は省略し、テンポは練習用に80へ変更しています。
資料の画像や日本語詞、既存の録音は転載していません。ピアノ音源で旋律だけを再生します。MusicXML・MIDIは練習画面からダウンロードでき、ト長調・表示譜の高さ・テンポ80で出力しています。画面で変更した調や声域はファイルに反映しません。