曲の原典をたどる
唱歌「月」の原典は?1911年の楽譜で、覚えているメロディーを確かめる
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「月」は覚えている。でも、歌詞を外して音名で歌おうとすると、どうでしょうか。今回は1911年の教科書に載る楽譜を手がかりに、短いメロディーを確かめてみます。最初から一曲を正確に歌おうとせず、二つの音、四小節のまとまりへと少しずつつなげていきましょう。
覚えている歌から始めてみる
秋の曲をいくつか挙げてみると、私が旋律を覚えている曲は意外に多くありませんでした。その中で記憶にあったのが「月」です。小学生の頃に習った曲でも、題名を見ただけでは思い出せないものがあります。今回は、今も覚えている曲を入口に選びました。
まずは楽譜を見る前に、思い出せるところを無理のない高さで口ずさんでみてください。途中で分からなくなったら、そこまでで構いません。その後で楽譜を見たり、鍵盤で音を確かめたりすると、自分がどこまで覚えていたかを比べられます。
音名がすぐに出てこなくても、歌えないということではありません。初めは「ラ」など一つの言葉で旋律をなぞり、音の高さを確かめてから音名を添える方法もあります。
原典は1911年の教科書30〜31頁
今回参照したのは、広島大学図書館が公開する文部省『尋常小学唱歌 第一学年用』です。国定教科書共同販売所から1911年に出版された資料で、「月」は第15曲として掲載されています。冊子の30頁が旋律譜、31頁が三番までの歌詞です。
下のリンクからビューアを開き、25画像のうち18番目を選ぶと、この見開きを確認できます。冊子に印刷された頁番号と、ビューアの画像番号は異なります。歌詞は月が出て、雲に隠れ、再び姿を見せる流れになっています。
資料ページではパブリックドメインとして公開されています。ここでは、この1911年版に印刷された音符を基準に読み進めます。「原典」と呼んでいますが、この本が曲の初出だと確認できたわけではありません。
1911年の原典を見る全12小節を、四小節ずつに分ける
原典はヘ長調、2/4拍子で、速度表示は四分音符88です。四分音符を1拍として、一小節に2拍入ります。楽譜は一段に四小節、それが三段並ぶ全12小節です。
最初の四小節は、四分音符を中心にゆったりと進みます。真ん中の四小節では「まるい」の細かなリズムが現れ、最後の四小節では音が上がってから終わりへ向かいます。楽譜の段ごとに区切ると、確認する場所を探しやすくなります。
それぞれの四小節の最後には八分休符があります。2/4拍子での八分休符は半拍の休みです。最後の音を次の音まで伸ばし続けず、休むところまで含めて一つのまとまりとして捉えてみてください。
冒頭の「ド→ラ」を、二音だけで確かめる
冒頭の二音はドから下のラへ進み、次の小節でも同じドからラを繰り返します。その後はファ、ソ、ラと上がります。ここでの音名は、原典のヘ長調を固定ドで読んだものです。ヘ長調の主音ファを「ド」と呼び替える読み方ではありません。
第1〜4小節の音の並び
ド・ラ | ド・ラ | ファ・ソ | ラ・休み
縦線は小節の区切りです。最初の六音は各1拍、最後のラは1拍半、休みは半拍です。
鍵盤で確かめられる方は、まずドと、その下のラだけを鳴らして聴いてください。一度音を止め、自分の声で二音をつなぎ、もう一度鍵盤を鳴らして比べます。声を出す前に次の高さを思い浮かべられるか、下がった先のラを曖昧にしていないかが確認するポイントです。
二音がつながったら、同じ組み合わせをもう一度歌い、続くファ・ソ・ラを加えます。高すぎる場合は一オクターブ下げるなど、楽に声が出る高さで試してください。原典の調で歌うことより、無理なく音を確かめられることを優先します。
聴いた音を声で再現すること自体が難しく感じられるときは、ピアノの音を声で再現する練習も参考になります。
「まるい」は、同じ音でもリズムが変わる
真ん中の第5〜7小節は、いずれもド・レ・ド・ラという音の並びです。ただし、三つとも同じ長さで鳴るわけではありません。第5・6小節は同じリズムを繰り返し、第7小節ではリズムが変わります。
| 小節 | 音の並び | 各音の長さ |
|---|---|---|
| 第5・6小節 | ド・レ・ド・ラ | 3/4拍・1/4拍・半拍・半拍 |
| 第7小節 | ド・レ・ド・ラ | 半拍・半拍・半拍・半拍 |
第5・6小節の最初のドは少し長く、次のレは短くなっています。楽譜では付点八分音符と十六分音符の組み合わせです。一方、第7小節では四つの八分音符が同じ長さで並びます。
ここで音程とリズムを一度に追いにくければ、先にド・レ・ド・ラを一音ずつ鳴らし、音の高さだけを確かめましょう。その後で、原典の長さをつけて歌います。音程確認のためにゆっくり均等に歌う段階と、楽譜のリズムでつなぐ段階を分ける練習です。
同じ音の並びだと分かっていても、長さが変わると歌った感触も変わります。第5・6小節と第7小節を交互に試し、リズムを変えてもド・レ・ド・ラの高さを保てるか聴いてみてください。
四小節から、全曲へつなぐ
最後の第9〜12小節も、まず四小節だけで確認します。第9小節ではファ・ソ・ラ・レと進みます。ファから順に上がる部分に続いて、ラからレへ跳ぶところを、二音に取り出して聴くこともできます。
- 第1〜4小節で、冒頭の二音と最後の半拍の休みを確かめる。
- 第5〜8小節で、音の高さを確認してから「まるい」のリズムをつける。
- 第9〜12小節で、音が跳ぶところを確かめ、終わりまで歌う。
- 最後に12小節を通し、最初に口ずさんだ旋律と比べる。
原典のテンポ88で追いにくい場合は、もっとゆっくりで構いません。つまずいたところがあれば全曲を最初から繰り返す前に、その前後の二音へ戻ってみてください。「どの音が分からないか」「高さは分かるがリズムで迷うのか」が見えると、次に確かめる場所を絞れます。
知っている曲を使うよさは、覚えている旋律と、今確かめた音を比べられることです。歌詞で歌う、音名を添える、再び歌詞で歌う。その行き来をしながら、短い「月」の中にある音の動きを辿ってみましょう。
「月」を四小節ずつ聴いて練習する
練習画面はヘ長調・テンポ88から始まります。男声では譜面より1オクターブ低いファ3〜レ4、女声では譜面と同じファ4〜レ5で再生します。声域と調を歌いやすい高さに合わせ、追いにくければテンポを56へ下げてください。
第1・第2・第3フレーズは、それぞれ第1〜4・5〜8・9〜12小節です。停止中に音符を押すと一音だけを聴けます。連続再生中に押すと、その音から先へ再生が続きます。第2フレーズで、同じ音の並びからリズムが変わるところを試してみましょう。
「月」で練習する原典の音符を読み、新しく浄書した譜面を表示しています。原典画像は転載していません。MusicXML・MIDIも練習画面からダウンロードできます。
曲を二音ずつ確かめる練習を、ほかの曲でも
好きな曲の中で曖昧に感じるところを見つけたら、その前後だけを取り出す方法もあります。ふたり音で続けてきた二音の練習と、曲のメロディーを確かめる練習のつながりを、別の記事で紹介しています。
好きな曲を二音ずつ練習する方法を読む画面で音符を押して聴く練習には、公開中の「虫のこえ」の練習画面も使えます。音名の呼び方は西塚式音名の解説をご覧ください。
参照資料
- 文部省『尋常小学唱歌 第一学年用』、国定教科書共同販売所、1911年、30〜31頁(広島大学図書館所蔵)。書誌と掲載譜を2026年9月6日に確認。
- 「月」の掲載頁(ビューア画像18)。本文の音名・音価・小節番号はこの旋律譜に基づきます。
- 広島大学図書館デジタルアーカイブの利用条件(パブリックドメイン)