曲の原典をたどる
「我は海の子」、覚えていたのは最初のフレーズだけ。原典で続きを練習する
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「我は海の子」は、童謡というか、唱歌にしては元気な曲だなと感じます。ただ、思い出してみると、記憶にあったのは最初の1フレーズだけでした。それなら、その先も改めて練習してみよう。今回は、そんなきっかけで選んだ曲です。
最初のフレーズから、その先へ
出だしが浮かぶと、その曲を知っている気になります。でも、続きを歌おうとしたところで、次の音が曖昧になることもあります。今回の私にとっての「我は海の子」が、そういう曲でした。
そこで、覚えている部分を入口にして、続きは短く区切って確かめる練習を用意しました。全16小節を4小節ずつ、四つのフレーズに分けています。まず第1フレーズを聴き、次に第2フレーズだけを聴く。一度に全部を覚えようとせず、一つずつ先へ進む形です。
「我は海の子」で練習する1910年の「我は海の子」を開く
練習の底本は、文部省『尋常小學讀本唱歌』です。国立教育政策研究所の教育図書館が公開するスキャンで、奥付には明治43年(1910年)7月14日発行、発行所は国定教科書共同販売所と記されています。
楽譜は冊子64–65頁、PDFでは全50ページのうち36ページ目にあります。続く冊子66–67頁(PDF 37ページ目)には七つの節の歌詞があります。ここでいう「四つのフレーズ」は、1番から7番という歌詞の区切りとは別に、旋律を四つに分けたものです。
調は変ホ長調、拍子は4/4。原典の速度指定は四分音符=126です。私には元気に感じられる曲ですが、練習では速さを急がず、テンポ88から始めます。掲載譜の音を独自に採譜・浄書し、タイとスラー、各フレーズ末尾の休符も確かめられるようにしました。
1910年の原典を見る(PDF)四つのフレーズの入口を聴く
途中で旋律が分からなくなったら、そのフレーズの最初の音を目印にします。以下の音名は、練習画面と同じ西塚式の固定ドです。ミ♭は「リ」、ラ♭は「サ」、シ♭は「チ」と読みます。調を変えると音名も変わります。
第1フレーズ(1〜4小節):リを伸ばし、低いチ・チへ。
第2フレーズ(5〜8小節):ド・チ・ド・レから、高いリへ。
第3フレーズ(9〜12小節):ファを伸ばし、同じファ・ファを繰り返す。
第4フレーズ(13〜16小節):第2と同じド・チ・ド・レで入り、最後のリへ戻る。
第1フレーズの出だしのリから、低いチまでは完全4度、半音五つ分下がります。一方、第2フレーズは第1の終わりのチより全音高いドから始まります。第1の終わりを聴いてから第2の最初の音を押すと、続きをどの高さで始めるか確かめられます。
第2フレーズで使う高いリは、この曲の最高音です。そこからチ、ソと下がります。高い音が歌いづらければ、先に調や声域を変えてください。変ホ長調のままでは、男声はチ2〜リ4、女声はチ3〜リ5。全体で1オクターブと完全4度の幅があります。
付点の「長・短」と、タイで伸ばす音
この曲には、付点四分音符と八分音符の組み合わせが何度も出てきます。四分音符を1拍とすると、長さは1.5拍と0.5拍。「長・短」の組み合わせを、同じ長さの二音にしないように聴いてみます。
ただし、冒頭の二つのリはタイでつながっています。タイは同じ高さの音をつなぐ曲線です。ここは1.5拍と0.5拍を合わせて2拍伸ばし、途中で鳴らし直しません。第3フレーズ冒頭のファも同じです。
第2フレーズ冒頭のドからチへの曲線は、異なる高さを結ぶスラーです。音高はドからチへ動きます。曲線があるからといって、すべて同じ音を伸ばすわけではありません。練習画面では、このドとチも一音ずつ押して聴けます。
また、各フレーズの終わりは音を3拍伸ばして1拍休みます。全曲で練習するときは、休符の1拍も含めて次のフレーズへ進みましょう。
第2と第4は、同じ音の並びを少し違って歌う
続きを覚えるうえで手がかりになるのが、第2フレーズと第4フレーズの共通点です。原典では、二つのフレーズは同じ順番の音高と、同じ音符の長さで書かれています。
違うのは曲線です。第2フレーズの2小節目(第6小節)にある高いリ・リは、1.5拍と0.5拍に分けて二度鳴らします。対応する第4フレーズの2小節目(第14小節)はタイでつながっており、高いリを2拍伸ばします。また、冒頭のド・チにスラーがあるのは第2フレーズです。
まず第2を聴いてから、第4を聴く。高いリを鳴らし直すところと、そのまま伸ばすところを比べてみてください。似ている部分を目印にすると、続きを一から別々に覚える必要がなくなります。
今日の練習は、第2フレーズを一つ覚えるところから
- 覚えているところを確認する。 変ホ長調・テンポ88で第1フレーズを聴きます。低い音と高い音の両方が無理なく歌える調・声域を選びます。
- 続きを一つだけ聴く。 第2フレーズに切り替え、ド・チ・ド・レという入りを聴きます。追いにくければテンポ68へ下げます。
- 止めてから歌う。 音を止め、「ラ」など一つの言葉で歌ってみます。分からなくなった音は、停止中の楽譜で一つずつ押して確かめます。
- 覚えた部分をつなぐ。 全曲に戻して第1から第2へのつながりを聴きます。続けて第3、第4も、一つずつ同じ手順で練習します。
最初の日に四つとも覚える必要はありません。「今日は第2の入りが分かった」というところまででも、最初のフレーズだけだった記憶の先へ進めます。慣れたらテンポを上げ、元気な印象の旋律をつなげてみましょう。
調はハ長調・ニ長調・変ホ長調・ヘ長調から選べます。旋律のMusicXML・MIDIも練習画面からダウンロードできます。ファイルは変ホ長調・表示譜の高さ・テンポ88で、画面の調や声域の変更は反映しません。
作者の資料と、今回使った旋律
1910年の掲載譜には個人の作詞・作曲者名がなく、奥付には著作権者「文部省」とあります。一方、小樽市立文学館の所蔵資料案内では、宮原晃一郎(1882〜1945)の資料として「(われは)海の子」の入選通知が紹介されています。
鹿児島市の2008年の記者会見記録にも、宮原が「日本の歌百選」で作詞者として紹介されている旨の説明があります。当時の楽譜の表記と、後年の作者に関する資料を分けて参照しました。今回の練習には歌詞を付けず、1910年掲載譜の旋律を使っています。
- 教育図書館「近代教科書デジタルアーカイブ」:『尋常小學讀本唱歌』。楽譜は冊子64–65頁、PDF 36/50ページ。奥付はPDF 49ページ。2026年9月15日確認。
- NDLサーチ:同書の書誌・公開先。教育図書館の資料への案内。
- 小樽市立文学館:宮原晃一郎の所蔵資料。生没年と入選通知の案内。
- 鹿児島市:2008年7月18日市長定例記者会見。宮原の遺品寄贈と作詞者に関する説明。
保護期間を満了した旋律を独自にデータ化・浄書し、許諾済みのピアノ単音で再生しています。歌詞と息継ぎ記号は省略しています。原典画像、現代の編曲譜や録音は転載していません。