ふたり音・曲で練習
『ふじの山』で音感練習|上がる音、下がる音を聴く
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「ふじの山」は、上昇と下降がはっきりしていて、音を確かめる練習に使いたいと思った曲です。知っている旋律でも、上がる途中の一音や、下がる幅を意識すると、聴き方が変わります。まずは方向を聴き、次に二音の距離を確かめてみましょう。
一段ずつ上がる音、跳んで下がる音、一段ずつ下がる音。同じ曲の中で比べられます。
「ふじの山」で練習するレからラへ、一段ずつ上がる
練習譜はニ長調です。第3フレーズの第10小節には、レ・ミ・ファ♯・ソ・ラと上がっていく音があります。最初の四音は八分音符、最後のラは二分音符。高い音へ進む途中の一音一音を、ゆっくり聴ける箇所です。
音階の隣り合う音をたどる動きを、順次進行と呼びます。ただし、隣の音までの距離は同じではありません。レ→ミとミ→ファ♯は全音、ファ♯→ソは半音、ソ→ラは全音です。上がる方向が分かったら、途中にある狭い二音にも耳を向けてみてください。
ニ長調ではファとドに♯が付きます。ハ長調へ変えると、この箇所はド・レ・ミ・ファ・ソになります。記事の音名は初期設定のニ長調・表示譜の高さを指しています。
ファ♯は「フィ」、ド♯は「デ」——西塚式で歌ってみる
♯の付いた音を声で確かめるときは、西塚式音名も使えます。ファ♯を「フィ」、ド♯を「デ」と呼び、黒鍵の音にも短い名前を付ける方法です。「ファ・シャープ」と長く言わずに、音符の長さに合わせて歌えます。
第10小節の上昇は「レ・ミ・フィ・ソ・ラ」、第15小節の下降は「ソ・フィ・ミ・レ」。二音を取り出すなら、「ミ→フィ」の全音と「フィ→ソ」の半音を、再生音を聴いてから歌って比べてみましょう。ド♯が出てくる第6・第11小節は「シ・デ・レ・シ」です。
ここでは実際の音の高さに名前を対応させる固定ドとして使います。調を変えたときは、移した先の音高に合わせて名前も変わります。楽譜の♯の意味と音名の対応は西塚式音名の説明、二音で試す手順は西塚式で半音・全音を聴く練習で紹介しています。
下がり方は二つある
第4フレーズの出だし、第13小節は高いレ→シ→ソ。最初は短3度、次は長3度の下降で、音階の隣の音を一つずつたどる動きより大きく離れています。高いレを2拍伸ばしてから、シとソへ移ります。
一方、第15小節のソ→ファ♯→ミ→レは、一段ずつ下がります。ソ→ファ♯は半音、その後のファ♯→ミとミ→レは全音です。「下がった」という方向だけで終わらせず、跳んで下がったのか、隣へ下がったのかを聴き分けられます。
| 二音 | 動き | 距離 |
|---|---|---|
| ミ→ファ♯ | 長2度上昇 | 全音 |
| ファ♯→ソ | 短2度上昇 | 半音 |
| 高いレ→シ | 短3度下降 | 半音三つ分 |
| シ→ソ | 長3度下降 | 半音四つ分 |
| ソ→ファ♯ | 短2度下降 | 半音 |
方向を聴いてから、二音を取り出す
- ニ長調の「第3フレーズ」を選び、まず歌わずに聴きます。第10小節の上昇に合わせて手を少しずつ上げても構いません。
- 停止して、第10小節のファ♯とソを順番に押します。次にミとファ♯を押し、半音と全音の上がり方を比べます。
- 「第4フレーズ」に切り替え、第13小節のレ→シ→ソを聴きます。第15小節のソ→ファ♯→ミ→レと、下がる幅の違いを比べます。
- 再生音が止まってから、確かめた二音を声や自分の楽器でたどります。急ぐ場合はテンポ72や60へ下げます。
- 最後に全曲を聴き、上がる音・下がる音・同じ高さに留まる音を見つけながらたどります。
全16小節を四小節ずつ、四つのフレーズに分けています。初期テンポは掲載譜と同じ96。付点四分音符は1拍半、八分音符は半拍です。音符タップは高さを確かめる単音再生で、音の長さと休符はフレーズ再生で聴きます。
男声設定は表示譜より1オクターブ低く、女声設定は表示譜と同じ高さです。調や声域を変えて歌いやすい範囲に合わせ、聴くだけでも使えます。歌声の録音・音程採点はありません。
1910年の掲載譜と、いま親しまれる旋律
今回確認した古い資料は、文部省編『尋常小學讀本唱歌』です。国立国会図書館サーチの書誌は1910年刊と記録し、教育図書館の公開PDFへ案内しています。冊子14頁には「ふじの山」の楽譜、向かいの15頁には歌詞が載っています。これを曲の成立年や真の初出の断定とは区別します。
現在の国内資料では「ふじ山」という表題も使われます。教育芸術社の令和6年度・3年生指導計画案にも歌唱共通教材として掲載され、旋律の特徴から曲の山に気付く活動が示されています。上がり下がりを聴くという今回の入口にもつながる曲です。
練習の旋律は、1910年譜と、姫路大学が公開する2019年の教員養成向け論文・36頁の譜例22を全16小節で比較しました。現代譜のハ長調をニ長調へ移すと、全55音符の音高と音価、四つの休符が一致します。この比較を根拠に、古い掲載譜を底本として使っています。
第15小節の最初の二音を付点四分音符・八分音符で載せる現代の公開譜もあります。今回は、1910年譜と教員養成向け譜例の両方にある四分音符二つを採用しました。すべての現代版が同一という意味ではありません。
今回の楽譜と出典
保護期間満了として公開されている1910年の主旋律を、独自にデータ化・浄書しています。ニ長調・4/4拍子・全16小節64拍、音高・音価・四分休符4個・テンポ96を保持。歌詞・息継ぎ記号・スラーは省略し、現代の伴奏編曲、運指、図版、録音は使用していません。
表示譜はレ4〜レ5の1オクターブ、男声はレ3〜レ4。MIDI・MusicXMLはニ長調・表示譜の高さ・テンポ96で配布しています。曲の上下を二音ずつ確かめるための練習版です。
- 国立教育政策研究所教育図書館:1910年掲載譜。PDF11/50頁の左頁、冊子14頁「ふじの山」。
- 姫路大学:西野晴香「小学校教員養成課程におけるピアノ実技指導に関する研究」。教育学部紀要12号(2019)、冊子36頁・譜例22の主旋律。運指案は利用していません。
- 音楽研究所:富士の山の公開譜。全曲の音高を比較し、第15小節のリズムの違いを確認。
上がる途中の半音と、二つの下がり方を、実際の音で比べてみましょう。
「ふじの山」で練習する