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曲の原典をたどる

「月の沙漠」を音名で歌える?伸ばす音と次の一音を確かめる

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昔、母が持っていたオルゴールを思い出し、最近「月の沙漠」を弾いてみました。すると、自分が覚えていたメロディーと違うところがたくさんありました。この記事では、その経験を出発点に、現在の国内公開歌唱譜を1928年の掲載譜と比べ、聴き慣れた主部16小節で、伸ばす音と次の一音を確かめます。

覚えている旋律を、まず短く口ずさむ

当時は音を十分に聴き取れていなかったのかもしれない、と感じました。ただ、覚えていた旋律との違いの原因までは分かりません。ここではまず、記憶にあるメロディーと、練習譜の音を一つずつ比べてみます。

最初は楽譜を見ず、思い出せるところだけを「ラ」など一つの言葉で歌ってみてください。そのあとに練習画面で同じ箇所を聴きます。比べるのは、声の響きや歌の上手さより、音が上がる・下がる幅と、次の音へ移るタイミングです。

高さは合っていても、伸ばす音を早く切り上げているかもしれません。反対に、長さを数えることに気を取られ、次の音の高さを見失うこともあります。気になるところを見つけたら、前後の二音だけに戻り、高さを確かめてからリズムを付けましょう。

ここでの音名は、練習譜のニ短調を固定した高さで読む表記です。練習画面では西塚式音名を使い、シ♭は「チ」と表示します。調を変えたときは、画面に出る音名に合わせてください。

現在の歌唱譜と、1928年の掲載譜

「月の沙漠」は加藤まさをの詩に佐々木すぐるが曲を付けた歌です。藤枝市文学館は、詩が1923年に発表されたことを紹介しています。曲名には「砂漠」ではなく「沙漠」の字が使われています。

現在の版として、Art Studio まほろばが公開する「月の沙漠」のピアノ伴奏譜を比較しました。伴奏を使わず、Vocalと記された歌唱段の全主部16小節を確認しました。前奏の最後にある1拍の歌い出しから、1〜3番用の終わりまでを、一度たどる練習にしています。

底本は引き続き、佐々木すぐる著『理想の唱歌教材 楽曲の部』(佐々木英発行、1928年)の115頁です。池田小百合「なっとく童謡・唱歌」で公開された表紙・奥付・目次・掲載譜を確認しています。作曲者名義の古い教材ですが、初版・自筆譜とは断定しません。

二つの譜の主部は、全56音符の音高・音価、休符、タイが一致しました。両方に4番の最後だけ進む終結部があり、主部にさらに8小節が続きます。ここでは基本の旋律をゆっくり確かめるため、終結部を付けず主部を一巡します。主部が一致するため、練習の底本には古い掲載譜を維持します。古い版だけに別の旋律がある、という意味ではありません。

全音楽譜出版社のメロディ譜の公開サンプルでも、見える箇所の旋律・リズムと構成を補助確認しました。白く隠れた部分は確認していません。今回確認した公開歌唱譜を根拠にし、すべての編曲や演奏が同じとは断定しません。

ファ・ソ・ラから、長く伸ばしたラの次へ

冒頭の短い入りはファ・ソです。次の小節でラに着き、タイでつながれたラを四分音符で数えて2拍半伸ばしてから、高いファへ移ります。そのあとはミ・レと下がります。

冒頭で確かめる二つの動き

ファ → ソ → ラ / ラ → 高いファ → ミ → レ

最初の三音は隣り合う音。ラから高いファへは短6度の跳躍です。高さを聴き分けるときは、まずこの二音を取り出します。

  1. 停止中に冒頭のファ・ソ・ラを一音ずつ押し、無理のない声で追いかける。
  2. ラと高いファだけを聴き、一度止めてから二音を歌う。
  3. 高いファからミ・レへ下がる動きをつなぎ、最後に元の長さで聴く。

高いファが苦しければ、まず声域や調を変えます。離れた音へ移る練習を、声を強く押し出す練習にしないことが大切です。音名がすぐに言えないときは、一つの言葉で高さだけを確かめても構いません。

タイで伸ばす音と、付点リズムを分ける

練習譜はニ短調・4/4拍子です。冒頭のファ・ソは、付点八分音符と十六分音符。二音を合わせて四分音符1拍分になり、長さの比は3対1です。二つを同じ長さで歌うと、次のラに着くまでのリズムが変わります。

ラに付いた曲線は、同じ高さの音を伸ばすタイです。二分音符と八分音符をつないでいるため、ラを2拍半保ちます。表示上は二つの音符でも、連続再生では一つの音として鳴り、途中で打ち直しません。

練習では、先にラから高いファへの高さを決めます。そのあと、ラを伸ばしてからファへ移るタイミングを再生音と比べてください。短い音だけを急いで歌うより、次の小節の頭までの流れを聴くほうが、どこを直したいか分かりやすくなります。

低い始まりと高い始まりを聴き比べる

第1フレーズの中ほどは低いレ・ミから始まり、ファを伸ばします。一方、第2フレーズは高いミ・ミから入り、次の小節でもミを伸ばしてからファ・ミ・レへ進みます。似たリズムがあっても、出発する高さは大きく違います。

練習画面は主部16小節を二つに分けています。古い掲載譜と比べると、第1フレーズが第1〜2段、第2フレーズが第3〜4段に対応します。それぞれ短い入りの1拍を含めて32拍です。第1・第2フレーズの冒頭を交互に聴き、高いミを歌い始める前に、その音だけを押して確かめましょう。

第2フレーズを聴いてから第1フレーズへ戻り、低い出だしと高い出だしを比べます。曖昧だった音だけを押して確かめると、毎回全曲を最初から聴かずに練習できます。

「月の沙漠」を二つに分けて練習する

初期設定はニ短調・テンポ80です。1928年の底本は四分音符116、現代歌唱譜は108で、80は音を追いやすくするために遅くした値です。男声はレ3〜ファ4、女声はレ4〜ファ5。調はイ短調・ハ短調・ニ短調・ホ短調から選べます。

停止中に音符を押すと一音を聴けます。連続再生中に押すと、その音から先へ進みます。気になる二音を確かめたらフレーズに戻り、最後に全曲を聴いてみてください。歌声の録音や音程採点はありません。

「月の沙漠」で練習する

練習版は前奏・各番の反復・4番の終結部を省き、主部16小節を一度演奏します。音高・音価・休符・タイを保ち、強弱は再現していません。歌詞・伴奏・原典画像は含めず、旋律のみのMusicXML・MIDIをニ短調・表示譜の高さ・テンポ80で用意しています。

次の曲でも、迷った二音に戻る

長い音のあとの跳躍は、「きよしこの夜」でも確かめられます。もっと短い曲で始めたいときは、全12小節の唱歌「月」へ。好きな曲に応用する手順は、二音ずつ練習する方法で紹介しています。

参照資料と旋律の扱い

旋律は、佐々木すぐるの没年1966年と日本の保護期間の扱いを照合し、保護期間満了として採譜しています。加藤まさをの歌詞、現代の編曲や録音の権利は別です。この練習版にはそれらを含めていません。底本のPDF・伴奏編曲・画像・MIDIの転載や再配布も行っていません。