曲の原典をたどる
「きよしこの夜」を音名で歌える?聴き慣れた旋律で二音と終わり方を確かめる
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「きよしこの夜」のメロディーは思い出せても、音名を添えると途中で迷うことはありませんか。今回は国内向けの公開譜をもとに、冒頭の四音と、最後の二つの終わり方を確かめます。クリスマスを待たずに、覚えている曲で耳と声をつなぐ練習を始めてみましょう。
歌詞を外すと、どこまで音を辿れる?
まずは楽譜を見る前に、思い出せるところを「ラ」など一つの言葉で口ずさんでみてください。途中で曖昧になったら、そこまでで構いません。次に練習画面で同じ箇所を聴き、音の高さが同じだったか、伸ばす長さだけが違ったかを比べます。
一曲を最初から繰り返す前に、迷ったところの前後二音だけに戻ってみましょう。聴く、止める、二音を声に出す、もう一度聴く。この順番なら、覚えている歌の流れに任せて通り過ぎていた音も確かめられます。
本文の音名は、練習譜のハ長調を西塚式音名で読んでいます。この旋律では白鍵のド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シを使うため、一般的な固定ド表記と同じです。調を変えた場合は、練習画面に表示される音名に合わせてください。
初演の楽譜と、今回使う歌集は別の資料
原曲のドイツ語名は「Stille Nacht! Heilige Nacht!」。ヨーゼフ・モールが1816年に書いた詩に、フランツ・クサーヴァー・グルーバーが1818年に曲を付けました。同年のクリスマス・イブ、オーストリアのオーベルンドルフで初めて歌われたと、Stille Nacht Gesellschaftの年表に記録されています。
ザルツブルク博物館によると、1818年の初演時の自筆譜は失われています。現存する最古の自筆資料は、モールが書いた約1820年の手稿です。「古い楽譜が見つかった」ことと「初演時の音をそのまま復元できる」ことは分けて考える必要があります。
以前の練習で採用していたのは、O. Hardwig編『Wartburg Hymnal』(1918年)の149頁、第113曲「STILLE NACHT.」です。初演から約100年後の歌集で、最上段の声部が現在の旋律とどこまで一致するかを、今回改めて比較しました。
約1820年のモール自筆譜には、現在の旋律と異なる細かな音の動きがあります。古い版は曲の歩みを知る資料として紹介し、練習には、国内向けのヤマハ『Song Book』で確認した聴き慣れた旋律を使います。
1918年の掲載譜を見る国内向けの譜面と比べた、最後の音の長さ
ヤマハの国内向けPSR-E383『Song Book』45頁・第050曲の主旋律を、1918年譜と全曲比較しました。音の並びは全46発音で一致します。ヤマハ譜はト長調・3/4拍子ですが、ハ長調へ移し、音価を半分にして二小節を一小節にまとめると、6/8拍子の練習譜として同じリズムを表せます。前奏・伴奏・運指は使っていません。
違うのは終盤の音を切る位置です。1918年譜では第10小節の高いミと、最終小節のドの後に八分休符があります。ヤマハ譜はその分も音を伸ばします。今回の練習もこの長さへ揃えました。以下の小節番号は、全12小節にまとめた練習譜の番号です。
音楽研究所の歌唱用譜やピアノ塾の入門譜でも音の並びを確認できましたが、息継ぎの休符や最後に伸ばす長さは異なります。すべての版を一つに混ぜず、今回はヤマハ譜の主旋律を基準にしています。
冒頭のソ・ラ・ソ・ミを、二音ずつ確かめる
第1小節はソからラへ上がり、ソへ戻って、ミへ下がります。第2小節も同じです。最初のソとラは隣り合う音ですが、最後のソからミへは、間のファを飛び越して下がります。
第1〜4小節の音列
ソ・ラ・ソ・ミ | ソ・ラ・ソ・ミ | 上のレ・レ・シ | ド・ド・ソ
縦線は小節の区切り。「上のレ」は冒頭のソより高いレです。音の長さは五線譜で確認します。
- 停止中に第1小節のソとラを押して聴き、一度止めてから二音を声に出す。
- ラからソへ戻る二音、ソからミへ下がる二音も同じように試す。
- 四音をゆっくりつなぎ、最後に第1フレーズの再生に合わせる。
ミへ下がる幅を狭く歌ってしまうなら、ソとミだけを交互に聴き直します。四音を歌えるようになったら、第2小節の終わりのミから、第3小節の高いレへ移るところも二音で確認しましょう。ここは曲の流れの中で大きく上がる箇所です。
6/8拍子は、三つずつの二まとまりで聴く
練習譜はハ長調・6/8拍子で、全12小節です。一小節に八分音符六つ分が入り、前半三つ分と後半三つ分の、大きな二拍として捉えられます。練習画面のテンポの数字は四分音符を基準にしています。
冒頭のソ・ラ・ソは同じ長さではありません。付点八分音符、十六分音符、八分音符の順で、八分音符を一つ分とすると「1.5・0.5・1」。三音を合わせて大きな一拍になり、続くミが三つ分で、もう一拍になります。
まず高さだけを一音ずつ確かめ、その後に長さを付けると、どちらで迷っているかを分けやすくなります。短いラを急いで発音することだけに集中せず、ソへ戻ってからミへ着地するまでを聴いてください。
中ほどは同じ二小節を繰り返す
第5〜6小節と第7〜8小節は、最上声の音高も音価も同じです。前半が「ラ・ラ・ド・シ・ラ」、後半が冒頭と同じ「ソ・ラ・ソ・ミ」になります。
第2フレーズを選び、一回目を聴いて、二回目は自分の声を添えてみましょう。二回目で高さがずれるようなら、ラから上のドへ跳ぶ箇所と、ド・シ・ラへ下がる箇所を別々に確かめます。同じ旋律を繰り返していると分かると、毎回新しい音列を覚える必要がなくなります。
最後は、上がって結ぶ形と下がって結ぶ形を比べる
第3フレーズでは、それまでの繰り返しから離れます。第9小節の「レ・レ・ファ・レ・シ」に続き、第10小節はドから上のミへ進み、それぞれ1拍半伸ばします。一方、第11小節では高いドからソ・ミへ下がり、ソ・ファ・レを経て、最終小節の低いドへ着地します。
第10小節のドとミをつなぐ曲線は、違う高さの音をまとめるスラーです。最終小節の二つのドをつなぐ曲線は、同じ音を伸ばすタイです。見た目は似ていますが、最後のドは打ち直さず、四分音符を1拍とすると合計3拍伸ばします。
まずドから上のミを二音で歌い、次に最後のレから低いドを二音で歌います。その後で第3フレーズを通し、前半は上へ、後半は下へ向かう違いを確かめてください。同じ言葉で歌われる終わりの部分も、音名にすると二つの形を比べやすくなります。
「きよしこの夜」を四小節ずつ練習する
初期設定はハ長調・テンポ56です。56は練習用に選んだ値で、掲載譜の速度指定ではありません。男声ではド3〜ファ4、女声ではド4〜ファ5で再生します。高低どちらかが苦しければ、声域と調を変えて楽に歌える高さを探してください。
第1・第2・第3フレーズは、それぞれ第1〜4・5〜8・9〜12小節です。停止中に音符を押すと一音を聴けます。連続再生中に押すと、その音から先へ進みます。難しいところを確かめた後に全曲を聴き、最初に口ずさんだメロディーと比べましょう。
「きよしこの夜」で練習する資料の画像は転載せず、旋律を独自にデータ化・浄書しています。歌詞・和声・伴奏は含めていません。練習譜のハ長調・高さで作ったMusicXMLとMIDIもダウンロードできます。
二音の確認を、ほかの曲にもつなげる
覚えている曲で曖昧な場所を見つけ、前後の二音を確かめる方法は、好きな曲を二音ずつ練習する方法でも紹介しています。6/8拍子とタイを別の曲で聴いてみたい方は、「仰げば尊し」の原典記事へ。短い曲でリズムの違いを確かめるなら、唱歌「月」も使えます。
参照資料
- O. Hardwig編『Wartburg Hymnal』、Wartburg Publishing House、Chicago、1918年、149頁、第113曲。掲載譜スキャン(The Hymns and Carols of Christmas公開)。最上声を2026年9月9日に目視採譜。現在の練習との比較資料。
- ヤマハ:PSR-E383 日本語Song Book。45頁・第050曲、第9〜32小節の主旋律を確認。今回の練習の基準。
- 音楽研究所:きよしこの夜、ピアノ塾:きよしこの夜・入門譜。国内向け公開譜の音列と休符の違いを比較。
- Stille Nacht Gesellschaft:自筆譜と公開譜。モール自筆譜と、それに基づく浄書を比較。練習への転載はしていません。
- Stille Nacht Gesellschaft:Research Timetable。作詞・作曲・初演の来歴。
- Salzburg Museum:モール自筆譜(BIB HS 2589)。約1820年との年代推定と、1818年の初演譜の散逸を確認。今回の採譜底本ではありません。