曲の原典をたどる
フリッパーズ・ギターから思い出した「もみの木」。聴き慣れた旋律を二音ずつ
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次に練習するクリスマスの曲を考えていて、「もろびとこぞりて」と「もみの木」を取り違えていたことに気づきました。思い浮かべていたのは、フリッパーズ・ギターの「レッド・フラッグ」と結びついている「もみの木」のほうです。その記憶から、古い楽譜を開いてみることにしました。
アルバムの終わりの曲から、ドイツの歌へ
フリッパーズ・ギターの1stアルバム『three cheers for our side〜海へ行くつもりじゃなかった〜』には、最後の12曲目に「レッド・フラッグ(Red Flag on the Gondola)」が収録されています。「記憶の記録LIBRARY」の作品資料では、作曲はtraditional、編曲はFLIPPER'S GUITARと記載されています。
私にとって「もみの木」は、この曲の記憶とつながっています。曲名を取り違えていても、思い出すきっかけになった音楽はありました。今回はその先にあるドイツの歌「O Tannenbaum」を、一音ずつ確かめます。
ここで用意したのは、国内で公開されている現代譜を使う練習です。フリッパーズ・ギターの録音や伴奏を採譜したものではありません。聴き覚えのある音と楽譜の音を比べながら、まず短い二音を歌えるところから始めます。
「もみの木」は、初めからクリスマスの歌だった?
ドイツ語の曲名は「O Tannenbaum」。歴史的な歌を研究するLiederlexikonによると、アウグスト・ツァルナックが既存の旋律に詞を付け、1820年に歌集へ載せた時点では恋の嘆きを歌う曲でした。
1824年、ライプツィヒの教師エルンスト・アンシュッツが最初の節を残して詞を改作し、クリスマスの歌として『Musikalisches Schulgesangbuch』に掲載します。旋律の作曲者は同資料で匿名とされており、「アンシュッツが1824年に旋律を作曲した」とは区別して考えます。
同じ旋律は別の歌にも使われてきました。Liederlexikonは「The Red Flag」への広がりも紹介しています。ただし、その来歴だけからフリッパーズ・ギターがどの版を参照したかまでは決められません。練習には、現在の国内譜で見られる、冒頭を繰り返す16小節の形を選びました。
古い版と、今の譜面を比べる
このページでは初め、Albert E. Wier編『Songs the Children Love to Sing』(1916年)として紹介される掲載譜を使っていました。今回、Art Studio まほろばの「樅の木」と、音楽教材サイト「ららりいぜ」の階名付き譜面を全曲比較し、練習の底本を現代譜へ見直しました。
1916年版は冒頭・中ほど・冒頭という12小節。比較した現代譜は、冒頭の旋律をもう一度繰り返してから中ほどへ進む16小節です。最初の小節のソ・ラも、古い版の1.5拍・0.5拍から、現代譜では1拍ずつになります。古い版を知る面白さはありますが、練習では聴き覚えのある曲の流れを大切にします。
現代譜にも違いがあり、各まとまりの2小節目の最後は、まほろば版ではソ、「ららりいぜ」版をト長調へ読み替えるとチ(一般的な固定ドのシ)です。この練習では、聴き慣れた「シ・ラ・シ・ド・ファ♯・ラ・ソ」の流れを優先し、まほろば版の該当する3音をチへ変更しました。変更後の全61音の音高・音価は、「ららりいぜ」版をト長調へ移したものと一致します。すべての演奏や日本語詞の版が同一という意味ではありません。
底本はト長調・3/4拍子。前奏と伴奏、歌詞、節ごとの反復を省き、主旋律を一度たどって終わる形にしました。フェルマータは長く伸ばさず、書かれた音価で再生します。
底本の現代譜を見る最初の「レ→ソ」と、同じソの繰り返し
音名は練習画面と同じ西塚式の固定ドで読みます。ト長調の冒頭はレ・ソ・ソ・ソです。レからソまでは完全4度、半音五つ分。最初はこの二音だけを取り出します。
- 停止中の練習画面で、最初のレと次のソの音符を一つずつ押して聴く。
- 音を止め、「ラ」など一つの言葉で二音を歌い、もう一度再生して比べる。
- 跳ぶ幅がつかめたら、ソを三つ繰り返すところまでつなぐ。
冒頭の入りと、第1小節
レ | ソ・ソ・ソ・ラ
初めのレは1拍。小節線のあとは、付点八分音符(0.75拍)・十六分音符(0.25拍)・四分音符(1拍)・四分音符(1拍)です。
三つのソは同じ高さですが、長さは異なります。まず最初の二つのソを「長・短」で聴き、次に1拍の三つ目までつなぎましょう。その後はラからチへ一段ずつ上がります。同じ音を保つところと、隣の音へ動くところを分けて確かめます。
休んだ後は、高いレから入り直す
第2フレーズはラ・ソと下り、半拍休んで終わります。続く第3フレーズの初めは、冒頭より1オクターブ高いレ。全曲では、ソから休符を挟んで高いレへ上がる場所です。
まず第3フレーズの最初のレを聴き、歌える高さか確かめます。次に全曲へ戻し、第2フレーズ末尾のソから再生して、休む長さと次のレをつなげてみてください。連続再生中に音符を押すと、その場所から先へ再生できます。
中ほどは「レ・レ・チ・ミ・レ」と進みます。レからチへ下がり、チからミへ跳ぶところを二音ずつ聴いてみましょう。ミはこの版の最高音です。歌いにくければ、先に調や声域を下げてください。
短い入りをそれぞれのフレーズに含めるため、第1フレーズは12拍、第2は12.5拍、第3は11.5拍、第4は12拍です。四つを同じ拍数にそろえるための休符は加えていません。
同じ旋律を、戻って確かめる
第1・第2・第4フレーズは、低いレから始まる同じ旋律です。第1と第4は同じ音高・音価。第2には、中ほどの高いレへ入る前の半拍の休符があります。まず第1を聴き、第4へ切り替えて、同じ音を思い出して歌ってみましょう。
途中のドからフィへ下がる二音も目印です。フィは西塚式でファ♯の音名。半音六つ分の下り幅があるので、ここも二音だけを押して確かめてから、その前後へつなげます。
「もみの木」を四つのフレーズで練習する
初期設定はト長調・テンポ80。底本のテンポ94から、練習用に80へ下げています。追いにくいときは56へ下げられます。調はヘ長調・ト長調・イ長調・変ロ長調から選べます。
ト長調では男声がレ3〜ミ4、女声がレ4〜ミ5です。全曲の音域は1オクターブと全音あるため、曲を知っていても無理に高い音を出さず、調や声域を変えてください。固定ドなので、調を変えると音名も変わります。
「もみの木」で練習する旋律だけのMusicXML・MIDIも練習画面からダウンロードできます。ト長調・表示譜の高さ・テンポ80で、画面の調や声域の変更はダウンロードには反映しません。
曲名の取り違えから、旋律を確かめる入口へ
参照資料と旋律の扱い
- Art Studio まほろば「樅の木」。ト長調PDFの1頁、第4小節末尾から第19小節と第21小節の終止形を採用。利用条件に従って出典を表示し、旋律を独自に浄書。
- ららりいぜ「もみの木」(2024年11月)。音楽教材として公開されたヘ長調の階名付き全曲譜を比較。ト長調への読み替えで61音中58音の音高が一致し、3か所の異同と全音価・休符・16小節の構成を確認。
- 1820年版の書誌・原資料。Zarnack『Weisenbuch』第2部53頁No.51は、今回確認できた範囲で最も早い掲載譜。現代譜とは構成・音高・リズムに違いがあります。
- 「The Christmas Tree (Der Tannenbaum)」の掲載譜と出典紹介。Albert E. Wier編『Songs the Children Love to Sing』(1916年)として紹介されたスキャンの最上声を、2026年9月14日に目視採譜。
- Liederlexikon:「O Tannenbaum」と1824年版の書誌。Tobias Widmaierの来歴解説と、詞・旋律の区別を参照。
- 記憶の記録LIBRARY:フリッパーズ・ギターの作品資料。1989年8月25日発売の1stアルバムと、第12曲「レッド・フラッグ」の作曲・編曲表記。
- ORICON:同アルバムの1993年盤の収録曲。第12曲の英語表記「RED FLAG ON THE GONDOLA」を確認。
出典表示による改変許諾に基づいて伝承旋律を独自に浄書し、既存の許諾済みピアノ単音で再生しています。底本の画像・PDF・MIDI、日本語訳詞、他の編曲譜・録音、アルバム画像は掲載していません。