ふたり音

曲の原典をたどる

フリッパーズ・ギターから思い出した「もみの木」。1916年の楽譜で旋律をたどる

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次に練習するクリスマスの曲を考えていて、「もろびとこぞりて」と「もみの木」を取り違えていたことに気づきました。思い浮かべていたのは、フリッパーズ・ギターの「レッド・フラッグ」と結びついている「もみの木」のほうです。その記憶から、古い楽譜を開いてみることにしました。

アルバムの終わりの曲から、ドイツの歌へ

フリッパーズ・ギターの1stアルバム『three cheers for our side〜海へ行くつもりじゃなかった〜』には、最後の12曲目に「レッド・フラッグ(Red Flag on the Gondola)」が収録されています。「記憶の記録LIBRARY」の作品資料では、作曲はtraditional、編曲はFLIPPER'S GUITARと記載されています。

私にとって「もみの木」は、この曲の記憶とつながっています。曲名を取り違えていても、思い出すきっかけになった音楽はありました。今回はその先にあるドイツの歌「O Tannenbaum」を、古い掲載譜から一音ずつ確かめます。

ここで用意したのは1916年の掲載譜の旋律を使う練習です。フリッパーズ・ギターの録音や伴奏を採譜したものではありません。聴き覚えのある音と楽譜の音を比べながら、まず短い二音を歌えるところから始めます。

「もみの木」は、初めからクリスマスの歌だった?

ドイツ語の曲名は「O Tannenbaum」。歴史的な歌を研究するLiederlexikonによると、アウグスト・ツァルナックが既存の旋律に詞を付け、1820年に歌集へ載せた時点では恋の嘆きを歌う曲でした。

1824年、ライプツィヒの教師エルンスト・アンシュッツが最初の節を残して詞を改作し、クリスマスの歌として『Musikalisches Schulgesangbuch』に掲載します。旋律の作曲者は同資料で匿名とされており、「アンシュッツが1824年に旋律を作曲した」とは区別して考えます。

同じ旋律は別の歌にも使われてきました。Liederlexikonは「The Red Flag」への広がりも紹介しています。ただし、その来歴だけからフリッパーズ・ギターがどの版を参照したかまでは決められません。ここでは、1916年の掲載譜を練習の基準にします。

1916年版の「The Christmas Tree」を読む

今回の底本は、The Hymns and Carols of Christmasが公開する「The Christmas Tree (Der Tannenbaum)」の楽譜画像です。同サイトではAlbert E. Wier編『Songs the Children Love to Sing』(1916年)からのスキャンと紹介されています。

1824年の掲載譜と比べると、音の進み方やリズムが違います。古い楽譜であっても、どの版でも同じ旋律とは限りません。今回は1916年版を選び、その版に記された音を練習できるようにしました。

調はト長調、拍子は3/4。伴奏付きの譜面から最上声を取り出し、独自にデータ化・浄書しています。伴奏・歌詞・強弱・スラーは省き、旋律の音高・音価と途中の八分休符を保ちました。

1916年版の掲載譜を見る

最初の「レ→ソ」と、同じソの繰り返し

音名は練習画面と同じ西塚式の固定ドで読みます。ト長調の冒頭はレ・ソ・ソ・ソです。レからソまでは完全4度、半音五つ分。最初はこの二音だけを取り出します。

  1. 停止中の練習画面で、最初のレと次のソの音符を一つずつ押して聴く。
  2. 音を止め、「ラ」など一つの言葉で二音を歌い、もう一度再生して比べる。
  3. 跳ぶ幅がつかめたら、ソを三つ繰り返すところまでつなぐ。

冒頭の入りと、第1小節

レ | ソ・ソ・ソ―・ラ

初めのレは1拍。小節線のあとは、付点八分音符(0.75拍)・十六分音符(0.25拍)・付点四分音符(1.5拍)・八分音符(0.5拍)です。

三つのソは同じ高さですが、長さは異なります。まず最初の二つのソを「長・短」で聴き、次に長く伸ばす三つ目までつなぎましょう。その後はラからシへ一段ずつ上がります。同じ音を保つところと、隣の音へ動くところを分けて確かめます。

休んだ後は、高いレから入り直す

第1フレーズはラ・ソと下り、半拍休んで終わります。続く第2フレーズの初めは、冒頭より1オクターブ高いレ。全曲では、ソから休符を挟んで高いレへ上がる場所です。

まず第2フレーズの最初のレを聴き、歌える高さか確かめます。次に全曲へ戻し、第1フレーズ末尾のソから再生して、休む長さと次のレをつなげてみてください。連続再生中に音符を押すと、その場所から先へ再生できます。

中ほどは「レ・レ・シ・ミ・レ」と進みます。レからシへ下がり、シからミへ跳ぶところを二音ずつ聴いてみましょう。ミはこの版の最高音です。歌いにくければ、先に調や声域を下げてください。

短い入りをそれぞれのフレーズに含めるため、第1フレーズは12.5拍、第2は11.5拍、第3は12拍です。三つを同じ拍数にそろえるための休符は加えていません。

最後に戻る旋律は、リズムも聴き比べる

第3フレーズは低いレから始まり、第1フレーズと同じ順番の音高をたどります。ただし、掲載譜の第3小節にあるラ・シは付点八分音符と十六分音符、対応する第11小節は均等な八分音符です。

二つのフレーズを交互に再生し、ラ・シの「長・短」と「同じ長さ」を聴き比べてください。また、第1フレーズ末尾には半拍の休符がありますが、終曲はソを1拍伸ばして終わります。似た旋律でも、最後まで同じ長さとは限らないところが練習の目印です。

「もみの木」を三つのフレーズで練習する

初期設定はト長調・テンポ80。掲載譜にはJoyfullyとありますが速度の数値指定はなく、80は練習用に選んだ値です。追いにくいときは56へ下げられます。調はヘ長調・ト長調・イ長調・変ロ長調から選べます。

ト長調では男声がレ3〜ミ4、女声がレ4〜ミ5です。全曲の音域は1オクターブと全音あるため、曲を知っていても無理に高い音を出さず、調や声域を変えてください。固定ドなので、調を変えると音名も変わります。

「もみの木」で練習する

旋律だけのMusicXML・MIDIも練習画面からダウンロードできます。ト長調・表示譜の高さ・テンポ80で、画面の調や声域の変更はダウンロードには反映しません。

曲名の取り違えから、旋律を確かめる入口へ

今回は「もろびとこぞりて」と「もみの木」の取り違えが、楽譜を開くきっかけになりました。曲名を覚えていることと、メロディーを一音ずつたどれることは、それぞれ確かめてみたいところです。まずはレとソ。その二音を聴き、歌い、手元に鍵盤があれば弾いてみてください。

もう一つのクリスマス曲なら「きよしこの夜」も紹介しています。音楽の記憶を入口にした練習として、ピアノの思い出からたどる「埴生の宿」も読んでみてください。

参照資料と旋律の扱い

保護期間を満了した古い掲載譜の旋律を独自に浄書し、既存の許諾済みピアノ単音で再生しています。原典画像、日本語訳詞、現代の編曲譜・録音、アルバム画像は掲載していません。