曲の原典をたどる
「蛍の光」は日本の曲ではなかった?スコットランドの原曲と、二音からの練習
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次に練習する曲として「蛍の光」を挙げたところ、原曲はスコットランド民謡だと分かりました。日本の曲だと思っていたので、譜面を読む前から発見がありました。今度は、よく知っているつもりの旋律も、古い楽譜で一音ずつ確かめてみます。
原曲は「Auld Lang Syne」。日本語の歌として親しまれてきた旋律
「蛍の光」の旋律は、スコットランドの「Auld Lang Syne」に由来します。国立教育政策研究所教育図書館の調査でも、『小学唱歌集 初編』の第二十「蛍」の出典を、このスコットランド曲と確認しています。
日本語の歌詞を付けたのは稲垣千頴です。日本語で歌ってきた曲に、外国から伝わった旋律が使われていた。「日本の曲ではなかった」という驚きをもう少し正確に言うと、日本で親しまれている唱歌の、メロディーの出自がスコットランドだったということです。
原曲の言葉と旋律にも来歴があります。モルガン図書館・博物館は、ロバート・バーンズが扱った歌詞に、ジョージ・トムソンが1799年の歌集で現在知られる別の旋律を組み合わせたことを紹介しています。バーンズが現在のメロディーを作曲した、という意味ではありません。
今回は原曲の英語詞や現代の伴奏を再現するのではなく、日本の古い教科書に載った旋律から練習します。
『小学唱歌集 初編』では、題名は「蛍」
底本は、国立国会図書館デジタルコレクションの『小学唱歌集 初編』です。文部省音楽取調掛の編纂で、奥付には「明治十四年十一月出版届」とあります。ここでは、その奥付を持つ資料を使い、実際の刊行日や初刷までは断定しません。
ビューアの第20コマは、右側が「第二十 蛍」の楽譜、左側が四番までの歌詞です。楽譜はト長調・4/4拍子で、四段に分かれています。短い入りの一音から始まり、各段の末尾には四分休符があります。
この練習版は旋律を一度通して演奏します。原典画像を転載せず、印刷された音高・音価・休符を独自にデータ化しました。覚えている歌い方と異なるところがあっても、すぐに間違いと決めず、「この版ではこう書かれている」と比べてみてください。
『小学唱歌集』の掲載譜を見る最初は「レ→ソ」の二音だけ
冒頭は低いレからソへ上がります。ト長調の掲載譜を固定ドで読むと、レ・ソ・ソ・ソ・シ。レからソまでは完全4度、半音で五つ分の距離です。隣の音へ一つ上がる動きとは違います。
冒頭の音と長さ
レ | ソ・ソ・ソ・シ
レは1拍。小節線のあとのソ・ソ・ソ・シは、順に1拍半・半拍・1拍・1拍です。四分音符を1拍として数えます。
- 停止中に最初のレと次のソを押して、二音だけを聴く。
- 音を止めてから「ラ」など一つの言葉で二音を歌い、もう一度再生して比べる。
- 高さがつながったら、ソを繰り返すところと最後のシまで加える。
最初のレは、4拍そろった小節の手前に置かれた1拍の「弱起」です。レを強い出発点にするより、次のソに着く流れを聴いてください。音程と拍の入り方を同時に直しにくければ、まず高さだけ、次にリズム、と分けて構いません。
ここでの音名は主音ソをドと読み替える移動ドではありません。調を変更したら練習画面の音名に合わせます。高いところが苦しければ、男声・女声や調を選び直し、無理のない声で試してください。
同じソでも長さは違う。曲線の先にも次の音がある
最初の小節のソは、長いソ、短いソ、1拍のソと続きます。最初の二つは付点四分音符と八分音符で、長さの比は3対1です。全部を等間隔にすると、覚えている歌のリズムから離れてしまいます。
次の小節はラ・ソ・ラ・シです。長いラと短いソが曲線で結ばれていますが、音高が違うので、同じ音を伸ばすタイではありません。この曲線はスラーとして表示し、再生でもラからソへ音が変わります。
まずラとソをゆっくり聴き、下がる高さを決めます。そのあと「長いラ→短いソ→ラ・シ」とつなげると、長さに気を取られて短いソを抜かしていないか確かめられます。
第2・第4フレーズの共通点と、第3フレーズの高い音
練習画面の四つのフレーズは、掲載譜の四段に対応します。いずれも短い入りから最後の休みまで16拍。第2・第4フレーズは同じ音とリズムの並びです。一方、第3フレーズは同じように始まってから、高いミへ進みます。
第2フレーズではラ・ソ・ラのあとにシが来ますが、第3フレーズでは高いミです。この「ラ→高いミ」は完全5度、半音で七つ分離れています。先にラと高いミだけを聴いてから、第3フレーズ全体に戻ってください。
各段の終わりは、2拍の音と1拍の休みです。休みも含めて聴き、次の短い入りへ移ります。慣れた歌でも、音の上がり下がりと休む場所を別々に確かめると、練習する場所が具体的になります。
「蛍の光」を四つに分けて練習する
初期設定はト長調・テンポ80。掲載譜にメトロノーム数値はなく、80は練習用の値です。原典調の男声はレ3〜ミ4、女声はレ4〜ミ5。ハ長調・ヘ長調・ト長調・イ長調から選べます。
停止中は音符を押して一音を確認でき、連続再生中は押した音から先へ移れます。最初の二音、第1フレーズ、全曲の順に少しずつつなげましょう。
「蛍の光」で練習する歌詞・伴奏を含まない旋律のみのMusicXML・MIDIも用意しました。ダウンロードはト長調・表示譜の高さ・テンポ80で、画面の設定変更は反映しません。
知っている曲を、出自と音の両方からたどる
曲名だけでは分からなかったスコットランドとのつながりが、今回の入口になりました。同じように、歌えるつもりだった旋律にも、譜面で初めて気づく長さや動きがあるかもしれません。違いを見つけたら、その前後の二音に戻って確かめます。
同じ『小学唱歌集』に載る曲では「仰げば尊し」も短い入りから練習できます。外国の旋律を古い資料までたどる例は「ロンドンデリーの歌」で紹介しています。
参照資料と旋律の扱い
- 国立国会図書館:『小学唱歌集 初編』第20コマ。第二十「蛍」の掲載譜。第34コマに明治14年11月出版届の奥付。2026年9月11日に目視採譜。
- 教育図書館:「蛍の光」の掲載とスコットランド曲の出典調査。
- モルガン図書館・博物館:An old song of olden times。原曲の歌詞と旋律の関係。
- 国立国会図書館:稲垣千頴(1847–1913)。
底本は国立国会図書館の公開データでPDM(パブリックドメイン)と表示されています。保護期間が満了した伝承旋律を独自にデータ化し、現代の編曲譜・市販録音は使用していません。画像は曲の出自と題名をイメージしたイラストです。