ふたり音

曲の原典をたどる

「ロンドンデリーの歌」の原典は?ダニーボーイより前の1855年版をたどる

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「ダニーボーイ」として親しまれる旋律は、その歌詞が作られる半世紀以上前に、曲名が不明なアイルランドの旋律として出版されていました。1855年版には、今の楽譜と異なる音の動きもあります。古い譜面でその違いを確かめ、練習には国内向け教材とも照合した現代譜の旋律を使います。

1855年の曲集では、曲名は不明

George Petrieが編集した『The Petrie Collection of the Ancient Music of Ireland』第1巻は、アイルランドの旋律を保存する団体によって1855年にダブリンで出版されました。現在「Londonderry Air」と呼ばれる旋律は、Irish Traditional Music ArchiveのPDFビューア86/229ページ、冊子57頁に、曲名不明を意味する「Name unknown.」として載っています。次の58頁は別の曲です。

譜面の直前でPetrieは、ロンドンデリー県LimavadyのJane Rossから提供された「美しい旋律」への謝意を記しています。Rossが地域で集めた未出版の旋律の一つとして残されたため、作曲者を特定できる作品ではなく、アイルランド伝承曲として扱われています。

なお、ITMAの解説によれば、この曲集は1853年から分冊で刊行されていました。本記事では全曲を直接確認した1855年の第1巻を紹介し、この旋律が初めて印刷された年までは断定しません。

Irish Traditional Music Archiveで原典を見る

「ダニーボーイ」は後から付いた歌詞

Frederic Weatherlyの詞による「Danny Boy」は、Boosey & Co.の1913年刊行譜として図書館に記録されています。1855年の曲集から半世紀以上後のことで、伝承旋律と「ダニーボーイ」の歌詞は別の時代に成立しています。

練習画面とダウンロードデータには、現代譜から独立して起こした主旋律だけを収録しています。英語詞・日本語訳詞・伴奏は含めていません。

古い譜面と、今の練習で使う旋律の違い

1855年版の第6小節は、F4・E♭4からC4・B3・C4・D4・E♭4・F4へ、八分音符で細かく進みます。一方、今回採用したArt Studio まほろばの現代譜では、F4・E♭4のあとC4を四分音符で保ち、八分休符を挟んでD4・E♭4・F4へ進みます。Bナチュラルへ下がる動きはありません。ここでいう小節番号は、最初の弱起を数えない番号です。

第9小節の最後も、1855年版のG4に対して、採用した現代譜はC5です。この二つの違いは、ヤマハの日本語版ソングブック「ロンドンデリーの歌・やさしい」の主旋律でも確認できます。練習ではこちらの音の動きを採用し、古い版の半音下降を新しく覚える必要がないようにしました。

現代にも歌唱用・器楽用で細かな音価や終わり方が異なる版があります。ヤマハ譜とは調と音の高さを揃えて全曲を比較し、旋律と途中の音価・休符の一致を確認しました。終止音はヤマハ譜の3拍に対し、底本ではタイで結ばれた2.5拍です。ふたり音では底本の長さを保ち、前奏・伴奏・反復・末尾の休符を省いて一度だけ演奏します。

長いフレーズは、上がる二音から確かめる

練習譜は変ホ長調、4/4拍子で、三つの八分音符の弱起から始まります。音域はC4〜G5の19半音で、1オクターブ半を超えます。静かな歌い出しから後半の高い音まで、一度に歌い切ろうとせず、四つのフレーズに分けて聴いてみてください。

まず第3フレーズの最初の小節末、B♭4からC5へ上がる二音を聴きます。間隔は全音、つまり2半音です。音を一つずつ確かめてから、直前の下降と組み合わせると、上がり直す場所を追いやすくなります。

聴き慣れた旋律を楽譜で練習する

変ホ長調を選び、まず第3フレーズを聴いてください。停止して、そのフレーズの最初の小節末にあるB♭4とC5の音符を順に押し、二音を声でつないでみます。その後でフレーズ全体へ戻します。男声設定では1オクターブ下のB♭3とC4で鳴ります。声域と調は歌いやすい高さへ合わせられます。

「ロンドンデリーの歌」で練習する

全音と半音の違いも確かめたい方は、白鍵にある半音の距離を覚える練習へ。長いフレーズを追いにくければ、短いフレーズから始める曲も選べます。

参照資料