曲の原典をたどる
アメイジング・グレイスの原曲は?1847年版New Britainと現在の旋律を比べる
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音楽の授業やCMで耳にする機会は多くても、自分で弾いたことはない「アメイジング・グレイス」。知っているつもりの旋律を19世紀の楽譜まで遡ると、現在の歌い方では滑らかにまとめられやすい、細かな音の折り返しが残っていました。
歌詞と旋律は、初めから一緒ではなかった
John Newtonの歌詞は1779年刊行の『Olney Hymns』に収められました。ただし、そこに現在知られる旋律はありません。米国議会図書館の解説では、現在につながる旋律はそれ以前に別の歌詞と組み合わされ、William Walker編『The Southern Harmony』1835年版で初めてNewtonの歌詞と「New Britain」が結びついたとされています。
「アメイジング・グレイス」は最初から一つの完成した歌曲だったのではなく、先に存在した歌詞と旋律が、出版の過程で出会った曲です。
米国議会図書館の年表を見る1847年版30頁、三声の中央にある旋律
オンラインで鮮明に確認できる1847年版では、「New Britain」は冊子30頁にあります。譜面は三声で書かれ、主旋律は一番上ではなく中央のテナー声部です。音の高さを形でも示すシェイプノートが使われています。
公開当初の練習は、この中央声部を採譜したものでした。今回、国内の現代譜・歌唱教材との全曲比較を行い、練習は現代譜の主旋律へ変更しています。1847年版は、古い旋律の形を知るための比較資料として紹介します。
1847年版の譜面を見るハ長調、3/4拍子、五つの音でできている
古い中央声部も、現代譜をハ長調へ移した練習版も、男声の再生音域はG3からG4までの1オクターブです。楽譜は読みやすいよう1オクターブ高いG4からG5で表示し、女声もこの高さで再生します。使われる音はド・レ・ミ・ソ・ラの五つだけで、ファとシは現れません。長音階の第4音と第7音を省いた五音音階です。
音が少ないから単純とは限りません。冒頭はソからドへ完全4度上がり、採用した現代譜の冒頭ではミ・レ・ドと短く戻ります。隣り合う二音だけでなく、跳んだ先から戻る距離も耳で確かめられます。
現在の旋律より、細かく折り返す
国内のピアノ塾「初級〜中級」の第1連と、信州大学教育学部附属長野中学校が公開する歌唱教材を、古い譜と比べました。1847年版では高いソの周りをレ・ミと細かく動く箇所がありますが、現代の二資料では高いソをタイで5拍保ちます。最後のドも、古い採譜データでは2拍だったところを、現代の二資料では5拍保ちます。
米国議会図書館の年表は、1900年頃にEdwin Othello Excellが和声を整え、旋律の移り変わりを滑らかにしたと説明しています。ただし現代の版も一種類ではありません。冒頭のミ・レ・ドは、ピアノ塾では8分音符と16分音符、学校の教材では3連符です。第3フレーズにも異なる動きがあります。練習では、出典表示の条件で利用できるピアノ塾の現代譜を採用し、別の版の音を混ぜて補ってはいません。
練習には現代の公開譜を採用する
ピアノ塾の公開譜「初級〜中級」1頁の上声から、第1連の主旋律だけを起こしました。ト長調からハ長調へ移し、伴奏と冒頭の半休符、第2連へ進む弱起・転調・第2連を省いています。旋律の音高・音価・二つのタイを保持し、1拍の弱起から最後まで48拍で一度だけ演奏します。
原譜のテンポ80は、音を追いやすい練習用の初期値72に変えています。この現代譜は1847年の原典でも初出譜でもありません。学校の教材や他のピアノ譜と全ての装飾が一致するわけではなく、耳で覚えた演奏と違う場合は、版の違いとして聴き比べてください。
採用した現代譜を見る耳で知っている曲ほど、一音ずつ確かめられる
この曲を楽器で弾いた経験はありませんが、音楽の授業やCMで耳にしてきたため、旋律には覚えがあります。まず聴き慣れた曲を手がかりに、一音ずつ高さと長さを確かめる練習に向いています。古い譜との違いも、曲の歴史を知る手がかりになります。
まず全曲を聴き、違和感のあったフレーズだけを選んでください。次に音符を一つずつ押し、細かな折り返しを二音ずつ声に出します。最後に全曲へ戻ると、聞き覚えだけで歌ったときと、音を確かめた後の違いを比べられます。長く保つ音は、短い音と同じように一つの高さとして聴き続けてみてください。
聴き慣れた旋律で長い音を確かめる
ハ長調で「第2フレーズ」を選び、高いソを5拍保つところを聴いてみてください。停止中にレからミ、ミからソを二音ずつ確かめ、もう一度フレーズを再生します。最後は「第4フレーズ」でドへ戻り、同じ高さを長く保つ感覚も確かめます。
「アメイジング・グレイス」で練習する曲の中で曖昧な場所を見つけた後の練習は、好きな曲を二音ずつ確かめる方法で紹介しています。
参照資料
- William Walker編『The Southern Harmony and Musical Companion』1847年版、30頁「New Britain」
- Library of Congress, “Amazing Grace” Timeline / “The Dissemination of Amazing Grace”
- John Newton『Olney Hymns』1779年(米国議会図書館の解説を参照)
- ピアノ塾「アメイジンググレイス」初級〜中級、PDF 1頁・第1連の上声。出典表示の利用条件に基づく採譜・移調。
- 信州大学教育学部附属長野中学校の音楽科研究資料、PDF 6〜11頁、譜例は10頁。三宅悠太編曲の歌唱教材は比較のみ、譜面・編曲を練習へ転載していません。