ふたり音

聴き慣れた曲で、音を確かめる

『赤とんぼ』は意外と音域が広い? 出だしの旋律を確かめる

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「赤とんぼ」は、童謡としては音域が広いと感じる曲です。出だしのドから上のファまで、あっという間に駆け上がる。よく知っている旋律なのに、音の高さに注目すると、その広がりに改めて気づきます。

七音で、1オクターブより先へ

今回はヘ長調の楽譜で確かめます。最初の七音は、ド・ファ・ファ・ソ・ラ・ド・高いファ。出発点のドから七音目のファまで、1オクターブと完全4度、合わせて17半音あります。曲全体の最低音と最高音が、もうこの出だしに現れます。

一度に17半音跳ぶわけではなく、同じ音を繰り返したり、隣の音へ進んだりしながら上がっています。それでも、最初のドと到着したファを比べると大きな距離です。「あっという間に駆け上がる感じ」を、まず短いフレーズで聴いてみましょう。

「赤とんぼ」で練習する

二つの「ド→ファ」を聴き比べる

出だしを二音ずつ見ると、最初のド→ファは上行の完全4度、5半音です。途中でファをもう一度歌い、ソ、ラ、ドへ進むと、六音目のド→七音目の高いファにも同じ完全4度が現れます。同じ幅の動きが、違う高さで二度出てくるのですね。

停止中に最初の二音を押して聴き、声でまねしてみます。次に六・七音目の二音を聴いて、同じ幅で上がれるか確かめます。最後に第1フレーズを通して聴くと、二音の練習を元のメロディーへ戻せます。

ファからソ、ソからラはそれぞれ長2度、ラからドは短3度です。高いファだけを目指そうとして迷うときは、途中の音も一つずつ確かめると、どこで高さがずれたかを探しやすくなります。

上がったあとは、レから低いファへ

第2フレーズの最初には、高いレから低いファへ下がる動きがあります。この二音は下行の長6度、9半音です。出だしの上昇に耳を向けたら、今度は大きく下がるところも確かめてみてください。

レ→低いファを聴き、いったん止めて歌い、もう一度聴いて比べます。そのあとにファ・ソ・ラと続けると、低いファに着いた後の動きまで練習できます。上がるところだけでなく、下がった先の音を保てるかにも耳を向けてみましょう。

この練習のヘ長調では、男声設定はド3〜ファ4、女声設定はド4〜ファ5です。高音や低音が出しにくい場合は、調や声域を変えて構いません。調を下げると最低音も下がるので、両端を短く聴き、自分が歌いやすい高さを選びます。移調しても17半音の幅は変わりません。

四つの短いフレーズで、音の長さも確かめる

第1:ドから高いファへ。 最初の七音の上昇と、その後のレ・ドまでを聴きます。

第2:レから低いファへ。 長6度の下行と、ラを伸ばした後の1拍の休みを確かめます。

第3:もう一度、高いファへ。 ラから始まり、レ・ド・レを経て高いファへ。後半の八分音符も追ってみます。

第4:ファへ帰る。 ド・ラ・ファ・ラ・ソ・ファから、最後のファと1拍の休みまで聴きます。

3/4拍子で、各フレーズは2小節・6拍です。第1小節の三音目のファ、第5小節の三音目のドは、それぞれ1拍半の付点四分音符。隣の八分音符と同じ長さにせず、ゆったりした流れの中で長短を確かめます。

  1. 一つのフレーズを聴く。 初期テンポは60。追いにくければ48に下げます。
  2. 止めて、同じ動きを歌う。 歌詞がなくても「ラ」などで試せます。
  3. 迷った二音だけを押して聴く。 高さと長さのどちらで迷ったかを確かめます。
  4. もう一度フレーズへ戻る。 二音だけで聴いた動きが、曲の中でも同じに感じられるか比べます。

連続再生中は音符を押すと、その位置から続きを聴けます。まずは出だしだけでも十分です。聴き慣れた曲を、今日はどこまで自分の声でたどれるでしょうか。

詩から歌へ。そして、教科書の調の違い

「赤とんぼ」の詩を書いたのは三木露風、曲を付けたのは山田耕筰です。たつの市の郷土学習資料では、露風の詩が1921年に発表されたことが紹介されています。三鷹市の広報(2009年3月15日号)は、その6年後の1927年に山田が曲を付けたと記しています。今回確認した1928年の歌集には、歌詞の頁と、五線譜・数字譜を並べた頁があり、当時の読者が旋律をたどるための二つの表し方を見ることができます。

一方、学校で親しんだ楽譜とは調が違うかもしれません。千葉市中央図書館の調査記録には、1947年と1955年の教科書に変ホ長調の譜が載ることが記されています。ヘ長調より全体に1音低く、最高音もファからミ♭になります。

同館は当時の音域に関する資料も紹介していますが、この曲を移調した理由そのものを記した資料は見つからなかったとしています。「子どもが歌いやすいように変えた」と断定せず、歌い継がれてきた楽譜には調の違いもある、と受け止めたいところです。練習画面では変ホ長調も選べます。

今回の底本と、練習用に変えたところ

底本は、日本交響楽協会出版部の『山田耕作童謡百曲集』第2巻・普及版(1928年)です。国立国会図書館デジタルコレクションの10コマ(冊子14–15頁)で、右側の15頁にある旋律を確認しました。今回全体を読めた古い掲載譜であり、初出を示すものではありません。

比較には、横山真一郎の2016年公開譜も使いました。歌の部分の31音と2か所の休符は、音高・音価とも1928年譜と一致しました。今回、Art Studio まほろばの現代声楽譜の歌唱部分8小節とも全曲比較しました。こちらは変ホ長調ですが、全音高くしてヘ長調へ揃えると31音の高さ・長さと2か所の休符が一致します。このため、練習には古い掲載譜を引き続き採用しています。横山版の前奏・伴奏・スラーや訳詞を取り込んだものではありません。

表示譜・再生データは底本から新しく作り、歌の旋律8小節を一度だけ演奏します。強弱や終盤の速度変化は再現せず、一定テンポのピアノ単音にしています。第4・8小節の四分休符は残しました。歌詞は練習画面に載せていません。

配布するMusicXMLとMIDIはヘ長調・表示譜の高さ・テンポ60で固定です。画面で選んだ男声・女声や移調・テンポの設定は、ダウンロードファイルには反映されません。

「赤とんぼ」の出だしを、楽譜と音で確かめる